せみおじさん。

ちょっと長いけど、昨日のはなし。
電車に乗っていたら、いきなり、かなり力強いセミの声が車内に鳴り響いた。
「ジージージー」っていって、ぴたっと止んだ。
セミ？まさかね。地下鉄やし。じゃ、誰かの携帯の着メロ？？
なんてことを思って、きょろきょろしてたら、
またおもいっきり「ジージージー」
音源は、ななめむこうにいるおじさんあたりなんやけど、その人は至ってクール。

一緒にいた友達が、
おじさんがセミを握ってどこかへやってた、
もしかしたらおしりの下に入れたかもとか言うもんだから、
んなわけないよー、と疑うわたし。
その子が自然を装い偵察しにいったところ。。。
『手にのせとる！！』
よくよくみたら、おじさんの右手の親指あたりに、黒いものがとまっとる。
『うわぉ、セミやん！！』　
セミは少しずつ前に移動しよるし。
なのにおじさんは、セミの存在がないかのようにさらりと、雑誌を読みよるし。

ふたりで我慢しつつ大笑い。なんで？なんで？なんでー？

私たちのなかで、セミおじさん疑惑が浮上。
おのひとは、ちょっと変わり者のセミが好きな、通称”セミおじさん”でさ、
いつもセミを連れて歩いとるんじゃないかって。
中野駅に着いた時おじさんが立ち上がる。
他の乗客も、みんなこそっと注目。
再び「ジージージー」
入り口でセミを外に飛ばし、おじさんはもとの席に戻る。
あれれ？？？
実は、ただ、めっちゃ優しいおじさんだったのでした。
座席に止まっていたセミをひと駅自分の手に避難させ、
逃がしてあげただけやったのね。
セミがじっとしとったのがすごい。
あぁ、変な人かもと思ってしまって反省。
最後まで見届けれてよかったーー。そして、中野駅は地上やけん、セミも助かったね。
あんな人もいるもんやねぇ。
あのおじさんが雑誌のページをめくる時に、右手は動かさないようにしとる様子を思い返して
なんともほほえましい気持ちになったのでした。
なんかちょっとといい話でしょ。